【第4話】心筋梗塞後の生活で気をつけること——食事・体の動かし方・再発のサインまで

心筋梗塞後の話 心筋梗塞の記録

📖 この記事はシリーズの第4話です。第1話第2話第3話を読む

心筋梗塞の治療は、ステントを入れて終わりではありません。薬を飲み続けることと同じくらい大切なのが、日常生活を見直すことです。

でも、「何を気をつければいいのか」「どこまで動いていいのか」が分からないと、毎日の行動が不安になってしまいますよね。

この記事では、退院後の生活で気をつけたいポイント——食事・水分・睡眠・運動・再発のサイン、そして使える制度まで——を、訪問看護師の視点からわかりやすくまとめました。ご本人はもちろん、そばで支えるご家族にも読んでいただけたら嬉しいです。

退院後の生活——日常で気をつけること

■ 食事


コレステロールを上げやすい食品(脂身の多い肉・揚げ物・バター・洋菓子など)は控えめにすることが推奨されています。また、血圧管理のために塩分を意識して減らすことも大切です。

【目標とされる塩分摂取量(1日)】

男性7.5g未満/女性6.5g未満(厚生労働省「日本人の食事摂取基準」より)*心疾患がある場合は、さらに制限が必要な場合もあります。


魚(特に青魚)・野菜・大豆製品を意識的に取り入れるのがコツです。


「完全禁止」より「工夫しながら続ける」ことが長期管理のコツです。彼の主治医である国立循環器病研究センター(国循)の先生からも「ラーメンはスープを残せばいい、味噌汁は半分にする工夫を」というとても現実的なアドバイスがありました。外食や冷凍食品が多い場合は、医師や管理栄養士に相談してみてください。

■ 水分

水分が不足すると血液がドロドロになり、血栓(血の塊)ができやすくなる可能性があります。意識的に水を飲む習慣が大切とされています。

*注意が必要な方:心不全のリスクがある場合は、逆に「水分制限」が必要なこともあります。必ず担当医に、「自分はどれくらい飲んでいいか」を確認してください。

■ 睡眠・ストレス

睡眠不足や慢性的なストレスは、心臓への負担を増やす可能性があるとされています。「元気そうに見えるから大丈夫」ではなく、休む時間をきちんと確保することが再発予防への第一歩です。

そばにいる方へ:退院後も仕事を続けなければならない状況もあるかと思います。私の彼もそうでした。せめて退勤後は、「ほっとできる時間」を作れるよう、周りのサポートも大切です。私と彼は離れた場所に住んでいましたので、毎週彼の住む街へ通い、自分なりに出来ることをサポートしました。

■ 出血に気をつける

抗血小板薬を飲んでいる間は、血が止まりにくいため、傷が治るのに時間がかかったり、内出血(青あざ)しやすくなったりすることがあります。以下の点に注意しましょう。

  • 歯科治療の前には必ず「心臓の病気で、血液をサラサラにする薬を飲んでいる」と歯科医師に伝えてください。
  • 怪我の予防:転倒や、怪我に注意しましょう。
  • 体調の変化:「黒い便が出る」「吐血する」などは、胃腸などの消化管から出血しているサインです。気づいたらすぐに受診してください。

■ 体を動かすことについて

「心臓が悪いから安静にしていなければ」と思われがちですが、心筋梗塞後の完全安静は推奨されていません。適度な身体活動は回復を助け、心臓を強くしてくれるとされています。ただし、急激な運動・過重労働は厳禁です。体の動かし方については、担当医に確認しながら少しずつ増やしていくことが大切です。

こんな症状が出たら、すぐ病院へ

退院後も、次のような症状が出た場合はすぐに医療機関を受診してください。救急が必要と感じる場合は迷わず119番に電話してください。

  • 胸の痛み・締め付け感・重さが続く
  • 強い息切れ、動悸
  • ひどいむくみ(特に足)
  • 突然の意識の変化・ひどいめまい・冷や汗

🔴 これらは再梗塞や心不全のサインである可能性があります。「大丈夫だろう」と様子を見ることは、リスクが高いとされています。迷わず受診してください。

「本人が一度発症しているので、いつもと違う感じは自分が一番わかるはずです。我慢せず、すぐに受診してください。」

——国立循環器病研究センター 担当医より

🌼 「いつもと違う」——その感覚を、どうか大切にしてほしいと思います。

さて、体調管理と同じくらい大切なのが、お金や生活の不安を減らすことです。心疾患の治療には、活用できる公的なサポートがいくつかあります。

知っておくと安心——使える制度

心筋梗塞での入院・治療は医療費が高額になることがあります。知っておくと助かる制度をご紹介します。

■ 高額療養費制度・限度額適用認定証

1か月に支払う医療費には、所得に応じた上限があります。「限度額適用認定証」を健康保険に事前に申請しておくと、窓口での支払いが上限額までで済みます。申請が間に合わなかった場合も、後から払い戻しを受けられることがあります。詳細は病院の医事課(会計)やソーシャルワーカー、加入している健康保険にお問い合わせください。

■ 民間保険の給付

加入している医療保険・生命保険があれば、「急性心筋梗塞」「ステント治療(PTCA)」が給付対象になる場合があります。保険証券を確認のうえ、保険会社(コールセンター)に問い合わせてみてください。入院・手術給付金だけでなく、三大疾病などの一時金が出るタイプもあります。まずは、保険会社へ「心筋梗塞で入院・手術した」と電話してみるのが近道です。

■ 傷病手当金

会社員など健康保険に加入している方が仕事を休む場合、一定期間、給与の一部が支給される制度があります(自営業などで「国民健康保険」の方は対象外ですが、もし「各職域の国保組合」などであれば傷病手当金がある場合もあります)。加入している保険の種類によって異なるため、職場の担当者に確認することをお勧めします。

心臓リハビリテーションのこと

退院後に「心臓リハビリテーション」を勧められることがあります。「運動するのは怖い」と思われるかもしれませんが、医療管理のもとで行う心臓リハビリは、再発率や死亡率を下げることが示されているとされています。

自己流で動くよりも、専門スタッフと一緒に段階的に行う方が、安全かつ効果的に体力を取り戻せます。「どのくらい動いても大丈夫か」の基準を知ることで、日常生活への自信にもつながります。医師から案内があれば、できるだけ参加することをお勧めします。

この記事で伝えたかったこと

心筋梗塞の治療は、ステントを入れて終わりではありません。「毎日の薬」「生活習慣の見直し」「定期通院」——この三つが、再発を防ぐ本当の治療だと思っています。

🌸 退院後の生活は、ときに孤独です。「どこまで動いていいの?」「何を食べればいいの?」——正解が見えないまま日々を過ごすことの、心細さを私は見てきました。

だからこそ、正確な情報を持ったうえで、担当医と相談しながら進んでほしいと思います。この記事が、その一助になれば嬉しいです。

【参考・情報源】

・日本循環器学会「急性冠症候群ガイドライン」https://www.j-circ.or.jp/
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準」https://www.mhlw.go.jp/
・厚生労働省「高額療養費制度について」https://www.mhlw.go.jp/
・厚生労働省「傷病手当金について」https://www.mhlw.go.jp/
・日本心臓リハビリテーション学会 https://www.jacr.jp/

※ 制度の詳細は変更されることがあります。最新情報は各機関のウェブサイトをご確認ください。

【免責事項】

※ この記事は、個人の体験および一般的な健康情報をもとにした情報提供を目的としており、特定の診断・治療の指示を行うものではありません。

※ 生活上の注意点・制度の詳細は個人の状況によって異なります。担当医・管理栄養士・加入している健康保険にご確認ください。

※ 記事内で紹介している症状はあくまで目安です。体の異変を感じた場合は、必ず担当の医師・医療機関にご相談ください。

※ この記事の執筆者は看護師国家資格保有者(看護師歴20年以上/外科・内科・集中治療・訪問看護)であり、ファイナンシャルプランナー資格を保有。また、元ライフセーバーとしての救護経験も有しています。医療・生活・海の安全にわたる幅広い知識をもとに執筆していますが、本記事は医師の監修を受けたものではありません。医療的な判断については、必ず担当の医師・医療機関にご相談ください。

※ 記事内の情報は執筆時点のものです。医療・制度情報は更新されることがありますので、最新の情報は各公的機関・医療機関のウェブサイトをご確認ください。

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